BCG健康遺伝子情報010:UMOD遺伝子
Updated on 25th June, 2016
塩分調整と健康に関わる遺伝子
遺伝子多型番号:rs13333226
- 応用できる健康管理 → 血圧管理、高血圧症の予防、脳血管障害(CVD)予防、乳がん予防など
- 遺伝子による体質差 → 腎臓機能(ナトリウム濃度調整機能)、高血圧症への耐性
Wタイプ: 腎臓機能、高血圧症への耐性が普通(A:A)
Hタイプ: 腎臓機能、高血圧症への耐性がやや高い(良性変異)(A:G)
Vタイプ: 腎臓機能、高血圧症への耐性がより高い(良性変異)(G:G)
Hタイプ: 腎臓機能、高血圧症への耐性がやや高い(良性変異)(A:G)
Vタイプ: 腎臓機能、高血圧症への耐性がより高い(良性変異)(G:G)
遺伝子型と体質
UMOD遺伝子にはいくつかの変異個所が報告されており、体内のナトリウム(塩分)濃度の調整に関わっていることが報告されています。その中で、BCG健康遺伝子010で確認する場所には主に3種類の遺伝子の型が報告されており、この遺伝子型の違いにより腎臓機能、高血圧症への耐性に関する体質が異なります。 研究報告において、VタイプもしくはHタイプの遺伝子を持っている人はWタイプの遺伝子を持っている人よりも腎臓の濾過能力を測る指標が高いことが報告されており、各遺伝子型の人を比較した場合、Hタイプの遺伝子型を持っている人はWタイプの遺伝子型を持っている人よりも高血圧症 や脳血管障害(CVD)になっている人が少ないことが報告されています。また、Vタイプの遺伝子を持っている人は、Hタイプの遺伝子型を持っている人より もさらに高血圧症や脳血管障害(CVD)になっている人が少ないことが報告されています。この遺伝子タイプによる高血圧への耐性の差異は、腎臓機能の指標の差異を計算の上で取り除いても依然として同じ傾向を示すことも報告されています。これについて、BCG健康遺伝子010を含む遺伝子部位により作られるたんぱく質が特にナトリウム(塩分)排出能力に関係することが推察されており、遺伝子型によって作られるたんぱく質の構造が異なるため、結果的に体内のナトリウム(塩分)濃度を調整する機能に違いが出ることが示唆されています。ただしこのような機能の差異は塩分濃度の高い食事をとっている場合には解消される傾向にあることも報告されており、どの遺伝子タイプであっても過度な塩分の摂取には注意が必要です。日本人の約90.7%の人がWタイプの遺伝子型で、約9.3%の人がHタイプの遺伝子型を持っていることが国際HapMap計画と呼ばれている国際研究プロジェクトにより報告されています。日本人ではまだVタイプの遺伝子型を持っている人は報告されていませんが、欧米人や漢民族(Han Chinese)にはVタイプの遺伝子型を持っている人が報告されています。血液中のナトリウムは主に腎臓の状態を調べるために健康診断などで行われます。一般的に、ナトリウムは体内の水分量や血圧の調整に不可欠で、水分が足りな いときは、腎臓が尿を減らすことで体内のナトリウムを保ちます。食事などにより塩分を摂取することで血液中のナトリウムが増加した場合、体はナトリウムの 濃度を一定にしようと、血液量と血流を増やします。その結果、水分量や血圧が上昇するのですが、この血圧の上昇が慢性化しているのが高血圧症です。BCG健康遺伝子010においてVタイプやHタイプの遺伝子型を持っている人はこの腎臓機能が高い傾向が報告されており、急激な血圧の上昇を和らげていると考えられています。健康診断結果などで、ナトリウムの値が高い場合、脱水症、高ナトリウム血症、高血圧、糖尿病、腎臓疾患、クッシング症候群などが疑われ、逆に値が低い場合、ネフローゼ症候群、低ナトリウム血症、肝硬変、腎不全、心不全、妊娠中毒症などが疑われます。利尿剤などを服用している人の場合、体内のナトリウムが排出されやすいため、その値は低くなります。ナトリウムやカリウムなどの電解質の量は、食事による影響が強いように思われがちですが、腎臓の働きで常に一定に保たれているため、検査前日の食事内容は検査結果とあまり関係がないとされています。また高血圧の人は正常値の人に比べて乳がんになる人の割合が高いとの研究報告もあるため、この面からも高血圧にならないような食生活を心がけることは女性の健康にとって有用と考えられます。厚生労働省の「平成26年国民健康・栄養調査結果の概要」によると日本人1日の食塩摂取量の目標が男性が8g未満、女性が7g未満に対して、1日に摂取している食塩の平均値は 10.0gで、男性が10.9g、女性が9.2gと報告されています。「日本人の食事摂取基準(2015年)の概要」によると、日本人は通常の食事を行う中で1日の食塩摂取量の目標値8gを下回ることはなく、食事の取り方を工夫することでこの目標値を下回ることができます。 どのタイプの遺伝子型を持っている人でも塩分を急激もしくは過度に摂取すると血管に過度な負担がかかるため、塩分をなるべく控えることで体への負担を和らげることができます。味の濃いもので塩分が多いものを食べる時は急激に塩分を摂取しないように少量ずつ時間をかけて食べることがお勧めですが、ダシを利かせることで塩分を控える工夫や片栗粉でとろみを利かせることで塩分が少なくてもしっかりと味を楽しむことができます。どの遺伝子型をもっている人でも同じような工夫を行うことで、血管を労り血圧を正常な値に収める健康管理や高血圧症や脳血管障害(CVD)の予防に役立ちます。表 1 BCG健康遺伝子001と関係する体質(遺伝子型別)
Wタイプ | Hタイプ | Vタイプ | |
---|---|---|---|
腎臓機能、高血圧への耐性 | 普 通 | 少し高い | より高い |
参照文献
- Padmanabhan S, Melander O, Johnson T, Di Blasio AM, Lee WK, Gentilini D, Hastie CE, Menni C, Monti MC, Delles C, Laing S, Corso B, Navis G, Kwakernaak AJ, van der Harst P, Bochud M, Maillard M, Burnier M, Hedner T, Kjeldsen S, Wahlstrand B, and etc.Melander. (2010 Oct 28). Genome-wide association study of blood pressure extremes identifies variant near UMOD associated with hypertension. PLoS Genet.
- Ana Pereira,Maria Luisa Garmendia, Maria Elena Alvarado, Cecilia Albala. Hypertension and the Risk of Breast Cancer in Chilean Women: a Case-control Study. Asian Pacific J. Cancer Prev.
- 厚生労働省. (平成26年3月28日). 日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要. 厚生労働省健康局がん対策・健康増進課栄養指導室.
- 厚生労働省. (平成27年12月9日). 平成26年国民健康・栄養調査結果の概要. 厚生労働省健康局健康課栄養指導室栄養調査係.
- National Center for Biotechnology Information. (2016). 参照先: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/
- International HapMap Project. (2016). 参照先: http://hapmap.ncbi.nlm.nih.gov/

遺伝子型の違いによる健康への影響は生活習慣や環境による影響がはるかに大きいため、遺伝子情報の違いによる体質差は参考情報としてご参考下さい。ブラケアでは女性の健食、健活、健眠をサポートする情報を提供します。
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