BCG健康遺伝子情報009ATP2B1遺伝子

Updated on 5th July, 2016
血圧(塩分)と健康に関わる遺伝子

遺伝子多型番号:rs2681472
  • 応用できる健康管理 → 血圧管理、高血圧症の予防、塩分摂取量、動脈硬化予防、子癇前症(しかんぜんしょう⇒妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症))予防、乳がん予防など
  • 遺伝子による体質差 → 遺伝子による体質差:高血圧への耐性、塩分摂取による血圧への影響度
Wタイプ:普通の体質(T:T)
Hタイプ:高血圧への耐性がやや高い体質(C:T)
Vタイプ:高血圧への耐性がより高い体質(C:C)

遺伝子型と体質

ATP2B1遺伝子は血管の反応において、血管細胞のカルシウムイオンを調整することで血圧に影響していることが明らかにされています。この遺伝子と高血圧症との関係が多く研究されており、高血圧のメカニズムを解明する上で重要な遺伝子の一つであると注目されています。このATP2B1遺伝子には多くの変異個所が報告されており、その中のBCG健康遺伝子009で確認する場所には主に3種類の遺伝子の型が報告されていて、この遺伝子型の違いにより高血圧への耐性や塩分摂取による血圧への影響に関する体質が異なります。BCG健康遺伝子009の遺伝子型について日本人の約34%の人がWタイプ、約48%の人がHタイプ及び約19%の人がVタイプの遺伝子を持っていることが国際HapMap計画と呼ばれている国際研究プロジェクトにより報告されています。研究報告において、HタイプまたはVタイプの人はWタイプの人に比べて一般的に最低・最高血圧がやや低く、また高血圧症になりにくい傾向にあることが分かっています。高血圧症とは慢性的に血圧が高い状態のことで、最高血圧140mmHg以上または最低血圧90mmHg以上が高血圧症の基準とされています(基準値は測定時の状況により差異があるため、正確な判定には医師の診断が必要です)。高血圧の人は正常値の人に比べて乳がんになる人の割合が高いとの研究報告もあるため、この面からも高血圧にならないような食生活を心がけることは女性の健康にとって有用と考えられます。 また、この遺伝子変異は血管の硬化や子癇前症(しかんぜんしょう)と呼ばれている妊娠中毒症とも 関係があることが報告されています。子癇前症は尿タンパクを伴う高血圧で、妊娠20週以降に発症し、早期胎盤剥離や早産が起こりやすくなることで新生児への問題リスクが高まったり、妊婦の手足のむくみや臓器障害などが起こったりすることがあります。一般的な原因は分かっていませんが、特に、妊娠34週以前に生じる妊娠早期の妊娠中毒患者にはWタイプの遺伝子型を持っている人が多いことが報告されています。妊娠中毒症でない女性703人と早期発症(妊娠35週以前)の妊娠中毒症260人を比較した研究で、HタイプもしくはVタイプの遺伝子型を持っている女性よりもWタイプの女性のほうが約1.47倍妊娠中毒症になる傾向が高かった研究成果が報告されています。ただし、この研究報告は特定のアジア女性民族を対象に行われたもので、全ての人種について同じ傾向があるかは定かではありません。一方でBCG健康遺伝子009においてVタイプの遺伝子型を持っている人でも、食生活が高い塩分のものに変化した際には血圧への影響が出やすい(上がりやすい)体質を持っていることが報告されており、塩分をなるべく控えることで体への負担を和らげることができます。味の濃いもので塩分が多いものを食べる時は急激に塩分を摂取しないように少量ずつ時間をかけて食べることがお勧めですが、ダシを利かせたり片栗粉でとろみを利かせるといった工夫により塩分を控えつつもしっかりと味を楽しむことができます。HタイプやWタイプの遺伝子型をもっている人も同じような工夫を行うことで、血管を労り血圧を正常な値に収める健康管理に役立ちます。

表 1 BCG健康遺伝子009と関係する体質(遺伝子型別)
  Wタイプ Hタイプ Vタイプ
高血圧 普 通 ややなりにくい よりなりにくい
妊娠中毒症の頻度 高 い 普 通 普 通
塩分の血圧への影響 普 通 普 通 大きい

参照文献

  1. Moo-Yong RheeJin Yang, Sang Woo Oh, Yongsoon Park, Cho-il Kim, Hye-Kyung Park, Sung Woo Park and Cheol-Young ParkSoo. (13 January 2011). Novel genetic variations associated with salt sensitivity in the Korean population. The Japanese Society of Hypertension.
  2. Levy DGB, Rice K, Verwoert GC, Launer LJ, Dehghan A, Glazer NL, Morrison AC, Johnson AD, Aspelund T, Aulchenko Y, Lumley T, Köttgen A, Vasan RS, Rivadeneira F, Eiriksdottir G, Guo X, Arking DE, Mitchell GF, Mattace-Raso FU, Smith AV, Taylor K, ScEhret. (2009 June). Genome-wide association study of blood pressure and hypertension. Nat Genet.
  3. Ji-Peng WanPhD, Hong Wang, MD, Chang-Zhong Li, MD, PhD, Han Zhao, MD, PhD, Li You, MD, PhD, Dong-Hong Shi, MD, Xiu-Hua Sun, MD, Hong Lv, MD, PhD, Fei Wang, MD, PhD, Ze-Qing Wen, MD, Xie-Tong Wang, MD, PhD, and Zi-Jiang Chen, MD, PhDMD,. (2014 November). The Common Single-Nucleotide Polymorphism rs2681472 Is Associated With Early-Onset Preeclampsia in Northern Han Chinese Women. Reprod Sci.
  4. Wang YY, Li Y, Zhou X, Wang X, Gao P, Jin L, Zhang X, Zhu D.Zhang. (2013 Feb). Common variants in the ATP2B1 gene are associated with hypertension and arterial stiffness in Chinese population. Mol Biol Rep.
  5. Ana Pereira,Maria Luisa Garmendia, Maria Elena Alvarado, Cecilia Albala. Hypertension and the Risk of Breast Cancer in Chilean Women: a Case-control Study. Asian Pacific J. Cancer Prev.
  6. 高血圧治療ガイドライン2014。 日本高血圧学会
  7. National Center for Biotechnology Information. (2016). 参照先: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/
  8. International HapMap Project. (2016). 参照先: http://hapmap.ncbi.nlm.nih.gov/

ブラケアジェネティクス 遺伝子情報を応用した健康管理情報は参考文献で明らかにされている研究成果を基に解説しています。
遺伝子型の違いによる健康への影響は生活習慣や環境による影響がはるかに大きいため、遺伝子情報の違いによる体質差は参考情報としてご参考下さい。ブラケアでは女性の健食、健活、健眠をサポートする情報を提供します。
注1:このサイトのコンテンツは事前の広告なく変更されることがあります。
注2:このサイトのコンテンツを引用されたり参照して新たなコンテンツを作成する場合、(株)ブラケアジェネティクスから引用もしくは参照したことを追記して下さい。
bcg008<   検査項目一覧へ   >bcg010