BCG健康遺伝子情報006,007FTO遺伝子

Updated on 25th June, 2016
脂肪量、体重と健康に関わる遺伝子

遺伝子多型番号:rs1421085、rs9939609
  • 応用できる健康管理 → 食事管理、メタボリックシンドローム予防、肥満予防、乳がん予防など
  • 遺伝子による体質差 → 脂肪の蓄積能力
Wタイプ:一般的な体質
Hタイプ:脂肪を蓄積しやすい体質
Vタイプ:より脂肪を蓄積しやすい体質

遺伝子型と体質

FTO遺伝子には多くの変異個所が報告されていますが、その内のBCG健康遺伝子006およびBCG健康遺伝子007で確認する場所のタイプによって体重や脂肪の増えやすさに違いがあることが知られています。

BCG健康遺伝子006(遺伝子多型番号:rs1421085)
  1. T:T ⇒ Wタイプ
  2. T:C ⇒ Hタイプ
  3. C:C ⇒ Vタイプ
BCG健康遺伝子006で確認する場所には主に3種類の遺伝子の型が報告されており、この遺伝子型の違いにより体に脂肪が蓄えられる体質が異なります。

研究報告において、Wタイプの人は脂肪をエネルギーに変換しやすいのに対して、VタイプもしくはHタイプの遺伝子を持っている人は脂肪を蓄える能力が高く結果的に脂肪を体に蓄積している傾向が報告されています。 自然界において食料を摂取できなくても蓄積した脂質からエネルギーを摂取できる機能は生存において重要な能力であるため進化の過程において獲得した能力で あることが推察できます。その一方で、先進国における現代社会では食事に飢えることはほとんどなく、それどころか高い栄養価とカロリーを有している食事を 取ることによりエネルギーの消費よりも蓄積が高まる傾向が肥満やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病の大きな原因となっています。

表 1 BCG健康遺伝子006に関する脂肪を体に蓄える能力の違い(遺伝子型別)
  Wタイプ Hタイプ Vタイプ
脂肪蓄積能力 普通 高い より高い

BCG健康遺伝子007(遺伝子多型番号:rs9939609)
  1. T:T ⇒ Wタイプ
  2. T:A ⇒ Hタイプ
  3. A:A ⇒ Vタイプ
研究報告において、BCG健康遺伝子006およびBCG健康遺伝子007のHタイプもしくはVタイプの遺伝子を持っている人は同じ食事でもWタイプの人より体重が増加しやすく、また体脂肪率が高めの傾向にあることが報告されています。高い栄養価とカロリーを有している食事を取ることによりエネルギーの消費よりも蓄積が高まると、肥満やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病の大きな原因となるため、体重を適切な値に保つことは健康の維持に役立ちます。

一方でHタイプまたはVタイプの人は食事の改善による体重の減少効果が高いことや、普段からよく運動をする場合にはHタイプまたはVタイプでも体重が増えにくいことが報告されており、これらの遺伝子型を持っている人は高いカロリーの食事や糖、脂質及び炭水化物の摂取方法を工夫することで消費できないエネルギーが体に蓄積されないように管理することや適度な運動を行うことでエネルギーを蓄積から消費へ変えることができます。一般的に体重の増加が必ずしも健康に悪いわけではありませんが、脂肪が過度に蓄積されると肥満度が高まりメタボリックシンドロームに至りやすくなり、糖尿病、高血圧、脂質異常症、乳がんなどの病気を引き起こしやすい体質になります。自分の体質を把握した上で、食事管理と運動管理を行う事で健康の維持や向上に役立てられることが期待されます。

肥満の度合いを評価する指標の一つにBMI(Body Mass Index:ボディー・マス・インデックス)があり、身長と体重から算出することができます。

BMIの推定式:BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m)

BMIが25.0を超えていることが肥満の一つの基準とされていて、肥満になると糖尿病、脳卒中、心臓病、脂質異常、高血圧などの生活習慣病や乳がんなどになりやすいとされています。多くの場合、BMIが30を超えている人は注意が必要で、早期に食事の管理や運動の習慣を取り入れることが奨励されます。一般的に筋肉は脂肪よりも約1.1~12.倍程度重たいため、運動選手など筋肉が脂肪よりも多い人は必ずしもBMIの値が目安にはなりません。また、体重が少ない人でも皮下脂肪などが多めの人は隠れ肥満であるため、BMIの値が低くても肥満に伴う健康管理への対策が必要です。
またHタイプもしくはVタイプの遺伝子を持っている人の方が2型糖尿病になる傾向が高く、BMIが25以上の場合にはその傾向がより高くなることが報告されています。適度な運動と適切な食事管理により体重を適切な値に維持することが大切です。

女性特有の健康に関して、一般的に初潮の年齢は栄養の摂取状況に関わることが報告されていますが、いくつかの遺伝子も初潮に関与していることも報告されています。BCG健康遺伝子007もその一つと注目されていて、HタイプまたはVタイプの人は初潮年齢が早目になる傾向が報告されています。早期の初潮は乳がん、子宮内膜がん、肥満、2型糖尿病、心疾患及び 成人時における身長の低下などと関係があることが報告されているため、早期の初潮を経験された人は医師と相談の上、予防と健康の維持に適切な健活(けんかつ)に努めることが奨励されます。

表 2 BCG健康遺伝子006 および BCG健康遺伝子007と関係する体質(遺伝子型別)
  Wタイプ Hタイプ Vタイプ
体重の増加能力 普 通 高 い より高い
2型糖尿病へのなりやすさ 普 通 なりやすい なりやすい
食事改善や運動による体重管理効果 普 通 高 め 高 め

参照文献

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